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つばさの翼

2009年5月24日 (日)

つばさの翼 (第三章の9) ・・そや、死んだらええねん・・

小説 つばさの翼 (第三章の9) ・・そや、死んだらええねん・・ を更新いたしました。

― そうや、どうせやったら僕も死んだらええねん。お父ちゃんにはあんなこと言われてしもうたし、お母ちゃんかって僕のこと、どこまでわかってくれてるか・・・。それやったらもう死んでしもうて、僕も天国に行ってシロと二人で過ごした方が楽しいやん。こないだもニュースで言うてたもんな、小学六年生が自殺したって。僕と同(おんな)じ歳やん。そや、死ぬって案外簡単なんかもしれへん ―

 自分の命を自ら断つ、というこを何の恐怖も躊躇(ためら)いも無しに考えついてしまうほど、つばさの心は凍りつき、その冷たさで感覚が麻痺してしまっていたのだった。


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2009年5月13日 (水)

つばさの翼 (第三章の7) ・・靖の苦悩・・

小説 つばさの翼 (第三章の7) ・・靖の苦悩・・ を更新いたしました。

そう、人は悲しみの淵や絶望という断崖の縁から足を踏み外してしまったとき、谷底から崖の上まで戻るためには、他の誰でもない、己自身の力で這い上がってくるしかない。

 ただ、それが現実だとは言え、人生というものの残酷で過酷な一面を理解するには、つばさはまだまだ人そのものとして幼かった。

 片や靖や陽子にしても親として未だ半人前であったため、世の中の理(ことわり)をよく知らない我が子を崖の頂へと上手く導いてやる術を知らなかった。


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2009年5月 9日 (土)

つばさの翼 (第三章の6) ・・つばさの苦悩・・

小説 つばさの翼 (第三章の6) ・・つばさの苦悩・・ を更新いたしました

「おい、人が聞いてんねんから、返事くらいしたらどうや」

「・・・うるさいな・・・」

 陽子には、つばさが何と言ったのかよく聞こえなかった。かろうじて靖の耳に届くほどの小さな呟き。しかしその呟きが靖の心を大きく波立たせる。

「なに!? 何(なん)やて。もういっぺん言うてみ!!」


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2009年5月 4日 (月)

つばさの翼 (第三章の5) ・・あれから・・

小説 つばさの翼 (第三章の5) ・・あれから・・ を更新いたしました。

「ごちそうさま・・・」

「なんや、もうごちそうさまか? ご飯のおかわりはいらんのか?」

 この一ヶ月で、同じような問いかけを何度したことだろうか。

 いらない、とつばさが答えることはわかりきっていたが、それでも靖はそれっぽっちでは足りないだろうという顔をしてつばさに訊ねた。


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2009年4月28日 (火)

つばさの翼 (第三章の4) ・・消える意識・・

小説 つばさの翼 (第三章の4) ・・消える意識・・ を更新いたしました。

 時計を見たわけではないが、ベッドに入ってから十分か十五分は経っただろうか。だとすると、もうそろそろ十時半になる。

<ダメだな。お父さん、やっぱり今日はなかなか帰ってこないや> 

 祐介の帰宅時間はかなり遅くなりそうだと思った途端に、眠気がさらに増してきて自分の意思とは関係なしに瞼が閉じられていく。そしてファ~と大きな欠伸を一つした後、伊織の意識はスーッと深い闇の中へ消えていった。


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2009年4月23日 (木)

つばさの翼 (第三章の3) ・・陽の力・・

小説 つばさの翼 (第三章の3) ・・陽の力・・ を更新いたしました。

「そうだね。お父さん、こういう場合に意外と良(い)いアドバイスをしてくれるときがあるもんね。」

「意外と、だけは余計よ。でも…、それも言えてるか」

 由紀恵はカラカラと大きく笑った。

 どこかから、祐介のクシャミが聞こえてきそうだ。そう思いながら、伊織は母親の顔を眺めた。

 聴話霊力とはまったく別物だが、今でも由紀恵は不思議な力を一つ持っている。


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2009年4月17日 (金)

つばさの翼 (第三章の1) ・・由紀恵と二人きりの夕食・・

小説 つばさの翼 (第三章の1) ・・由紀恵と二人きりの夕食・・ を更新いたしました。

 三十日目を迎えた週の金曜日、夕食に出てきた大好物の、由紀恵特製デミグラスソースがかけられたハンバーグを目の前にしても、伊織の箸は一向に進まなかった。

「もう、伊織ったら、つはさが元気ないのはよくわかるけど、ここんとこ、あんたまで落ち込んじゃって、いったいどうしたのよ」

「別に落ち込んでるわけじゃないよ。」

 テーブルを挟んで伊織の正面に座っている由紀恵が、天板に両手をついて椅子から腰を浮かして身を乗り出し、息子の顔をしげしげと覗き込む。


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2009年4月13日 (月)

つばさの翼 (第二章の38)(第二章の最終話) ・・灰色の一ヶ月・・

小説 つばさの翼 (第二章の38)(第二章の最終話) ・・灰色の一ヶ月・・ を更新いたしました。

 こうしてクリスマスの日も、つばさの部屋はただ寂しい時間だけが過ぎていった。そしてそんな時間の流れは、この日だけにとどまらず冬休みを通して同じような調子で過ぎてゆき、三学期が始まってからも、つばさの心は相変わらず空っぽのままだった。

 こうしてシロが死んでからの一ヶ月という時間は、つばさにとっても伊織や靖に陽子たちにとっても、灰色の雪雲が空を覆いつくしたような、重苦しい雰囲気を纏った長い長い時間となったのである。


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2009年4月 9日 (木)

つばさの翼 (第二章の37) ・・悩める伊織・・

小説 つばさの翼 (第二章の37) ・・悩める伊織・・ を更新いたしました。

 でも、シロがあそこまで心配している様子からすると、つばさはなかなか立ち直れないと考えているのかもしれない。音信不通の間、特別なことはしなくてもいいってあいつは言ってたけど、本当にそれで大丈夫なのか? やっぱり元気づけることをやってやらないとな。

 そう思って思案してみるものの、すぐにはこれといった良い案が浮かんでくるはずもない。そんな自分に伊織は少し苛立ちを覚える
。 

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2009年4月 8日 (水)

つばさの翼 (第二章の36) ・・しばしの別れ・・

小説 つばさの翼 (第二章の36) ・・しばしの別れ・・ を更新しました。

<ただ、こればっかりはどんなに優しい言葉をかけてもアカン。自(みずか)らが立ち直ろうとせんことには、どないもならん。そやから伊織、つばさを傍で支えてやってくれ。特別なことはせんでエエ。ただ傍に居てやるだけでも、伊織なら・・つばさは・・・受け入れ・・だろう>

 はっきりと聞こえていたシロの声が、また途切れ途切れになり始め、ところどころの言葉が飛んでいる。それはまるで、電波の受信状況が悪いラジオを聞いているいるかのようだ。

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2009年4月 7日 (火)

つばさの翼 (第二章の35) ・・聴話霊力・・

小説 つばさの翼 (第二章の35) ・・聴話霊力・・ を更新いたしました。

 シロの魂は、これから「天魂界」というところに昇るのだという。この世で世間一般に言われる天国がそれに当たる場所で、早い話が成仏するということらしい。

 成仏してしまうと、この世に残っている「思い」が完全に昇天してしまうため、死者と生者の奇跡的な会話もできなくなってしまう。

 でも、たった一つだけ天魂界に昇った魂と、この世の者が意思を交わす方法がある。それは亡くなった者の体の一部、つまりシロの粉骨に聴話霊力者である伊織が触れることで、一定の時間意志の疎通ができるのだという。


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2009年4月 6日 (月)

つばさの翼 (第二章の34) ・・ベクトルの割合・・

小説 つばさの翼 (第二章の34) ・・ベクトルの割合・・ を更新いたしました。
以下はその一節です。


「シロとの約束は絶対に守る。でも、今すぐっていうわけにはいかへんみたい。そやからもうちょっと時間・・・、くれへんか」

 フゥーっと大きな溜め息をついた陽子は、少し困惑した顔で「そう、わかったわ」と一言だけ返事をした。

 ただ、時間をくれないかというつばさの言葉は、その十分の一だけが陽子に向かっても発せられたものであり、十分の九は細かい粉になって小さなカプセルに入れられたシロに向けられたものであった。


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2009年4月 1日 (水)

つばさの翼 (第二章の31) ・・一歩ずつ、一歩ずつ・・

小説 つばさの翼 (第二章の31) ・・一歩ずつ、一歩ずつ・・ を更新いたしました。
以下は小説の一節です。


「・・・そうやな、つばさ。堀川さんの言うとおりや。おまえはそのとき、その日、シロに注ぐことができる限りの愛情を注いできたやないか。そのことをあいつは十分にわかってる。そやからシロは、あれだけおまえに懐(なつ)いとったんや ― 」

― 今、つばさがしなくてはならないこと。それは過ぎてしまった時間を悔やむことではなく、これからをつばさらしく、元気に過ごしていくことやないかな。すぐに元気になれなんて言わない。ゆっくりでいいから、一歩ずつ、一歩ずつ、な。それが昨日の夜にシロと約束した”強くなる”っていうことやと、お父ちゃんは思うんや ―


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2009年3月31日 (火)

つばさの翼 (第二章の30) ・・懺悔・・

小説 つばさの翼 (第二章の30) ・・懺悔・・ を更新いたしました。

 つばさは、そんな自分が情けなくて悔しくて「チクショウ!」と叫び、カプセルをギュッと握り締めその手を胸に押し当てると、急に足の力が抜けたようにガクンと膝が折れて締まった。

 伊織にはひざまずいたその格好が、まるで十字架に貼り付けられたキリストの像の前で、懺悔をする信者のように見えた。


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2009年3月30日 (月)

つばさの翼 (第二章の29) ・・初めて知ったこと・・

小説 つばさの翼 (第二章の29) ・・初めて知ったこと・・ を更新いたしました。
以下は小説の一節です。


 シロ。シロが・・・、年老いて尚もガッシリとして、引き締まった体をしていたあのシロが、一辺が僅か10センチあるかないかの正方形の小さな箱の中にある、それよりもちいさなカプセルの中に納まっているなんて。

― 火葬されるって ―

 つばさは知らなかった。

― 骨だけになるって ―

 亡骸を焼いて葬るということが、いったいどういうことなのかを。

― こういうことなのか ―


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2009年3月27日 (金)

つばさの翼 (第二章の28) ・・再会を前にして・・

小説 つばさの翼 (第二章の28) ・・再会を前にして・・ を更新いたしました。
以下はその一節です。


「大丈夫か?」

「うん、どうむない(*大丈夫の意味)・・・・・、って言えば嘘やな。早く会いたい気もするし、怖い気もする。半分半分、いや怖い気持ちの方がだいぶ強いな」

 つばさは正直に、その心境を伊織に伝えた。

 今、伊織に見栄を張っても仕方ない。伊織が僕の傍に居てほしいのは、素直な自分をさらけ出して少しでも楽になりたっかたからだ。そう思い、つばさは「どうむない」と言った後、少し間を置いて伊織に本音を素直に伝えた。


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2009年3月26日 (木)

つばさの翼 (第二章の27) ・・イチゴのショートケーキ・・

小説 つばさの翼 (第二章の27) ・・イチゴのショートケーキ・・ を更新いたしました。
以下は小説の一節です。


 その後すぐに「いただきまーす」という声が、部屋に広がる。特に陽子の声は、他の誰よりも弾んでいた。

 生クリームの甘さは控えめで、ケーキの上にふんだんに飾られ、またフワフワのスポンジとスポンジの間に、純白のクリームと一緒に挟まれたイチゴたちは瑞々しい甘さとほどよい酸味が混ざり合い、しっとりとした舌触りのスポンジと口の中で上手い具合に絡んでくる。

 陽子の言ったとおり、ケーキは本当に美味しかった。


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2009年3月25日 (水)

つばさの翼 (第二章の26) ・・伊織の関西弁・・

小説 つばさの翼 (第二章の26) ・・伊織の関西弁・・ を更新いたしました。
以下はその一節です。


「・・おおきに・・」

「うぁー、なんべんも言うけど、おまえに関西弁は似合わんで。気色悪いから止めてくれや!」

 伊織がたまに口にする強い標準語訛りの関西弁は、生粋の京都人であるつばさにとって、お世辞にもその耳に心地良いものではなかった。


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2009年3月24日 (火)

つばさの翼 (第二章の25) ・・ティッシュペーパー・・

小説 つばさの翼 (第二章の25) ・・ティッシュペーパー・・ を更新いたしました。
以下は小説の一節です。

 つばさはティッシュを両手で二つ折りにすると、思いっきり鼻をかんだ。

「あ~、すっきりした。ホイ、これはおまえにやるわ」

 つばさは鼻水が包み込まれたティッシュを、伊織の顔の前に突き出した


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2009年3月22日 (日)

つばさの翼 (第二章の25) ・・吐露・・

小説 つばさの翼 (第二章の25) ・・吐露・・ を更新いたしました。

「そやけそ、おまえにだけは聞いてほしかったし、信じてほしかった。そんでおまえは、ちゃんと話を聞いて信じてくれた。それがめっちゃ嬉しかったんや。ちょっとだけやけど、なんや心がスーッとしたわ」

 胸の中に溜め込んでいた物を幾ばくかでも吐露できたこと、でつばさの気持ちは緩んだ。すると目尻から、涙が一粒ずつツーっと流れ落ちてきた。


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2009年3月20日 (金)

つばさの翼 (第二章の24) ・・トラウマ・・

小説 つばさの翼 (第二章の24) ・・トラウマ・・ を更新いたしました。

 やっぱり怖い。またあの頃のように、一人ぼっちになってしまうのは。

 ファンヒーターのデジタル表示が、室温二十二度と表示していたが、つばさが離れていってしまったときのことを考えると、伊織の背筋がスーッと冷たくなった。

<もう絶対に嫌だ。あんな寂しい思いをするのは・・・>


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2009年3月19日 (木)

つばさの翼 (第二章の22) ・・煮え切らない・・/つばさの翼 (第二章の23) ・・不安・・

小説 つばさの翼 (第二章の22) ・・煮え切らない・・/つばさの翼 (第二章の23) ・・不安・・ を更新いたしました。

以下は小説の一節です。


 実はおれも・・・、と本当のことを言えば、この場ではつばさは喜んでくれるかもしれない。

 でもその後、もし昔は他にも沢山の死んだ人の声が聞こえたことをつばさが知ったら、何かの拍子でそのことをうっかりと喋ってしまったら、東京で暮らしていた頃のようにやがてはつばさも気味悪がって、自分から遠ざかっていってしまうのではないか。

 そんな不安が、伊織の頭の中を行きつ戻りつした。


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2009年3月17日 (火)

つばさの翼 (第二章の21) ・・言われついでに・・

小説 つばさの翼 (第二章の21) ・・言われついでに・・ を更新いたしました。
以下は小説の一節です。



「ああ、お母さん、伊織だけれど。今、つばさの家にいるんだ。六時前には帰るから。え? ちょっといろいろとあって、その時間じゃないと帰れないんだよ。詳しい事情は帰ってから話すから。それじゃ!」

<あの話し方やと、小母ちゃんの話を突っぱねて、強引に電話を切ったな>

 そう思ったつばさはゆっくりと体を起こして、子機を元の場所へ置きに行った伊織が帰ってくるのを待った。



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2009年3月15日 (日)

つばさの翼 (第二章の20) ・・図星・・

小説 つばさの翼 (第二章の20) ・・図星・・ を更新いたしました。
以下は小説の一節です。

 東京から京都に引っ越してもう三年近くが経とうというのに、伊織の言葉はまったくこっちの色に染まっていない。

― 不思議なもんや ―

 つばさはときどき、こう思うことがある。

 最初は伊織の喋り方に、鳥肌が立ちそうな嫌悪感を抱いたものだった。

 でも今では、そんな伊織のイントネーションが、使い込まれたグローブが手にぴったりと馴染むように、クラスの他の誰と話しているときよりも、つばさの耳に一番しっくりとくるのだから




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2009年3月14日 (土)

つばさの翼 (第二章の19) ・・二足のスニーカー・・

小説 つばさの翼 (第二章の19) ・・二足のスニーカー・・ を更新しました。
以下は小説の一節です。


 今、子供たちの間で流行(はやり)の何とかというスニーカーが二足、家の奥に踵を向けて、一足は左右が少し段違いになって、もう一足はつま先がちょっと開いた状態で仲良く並んだかと思うと、ドンドンドンという音と共に二人の姿は二階へと消えていった。

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2009年3月13日 (金)

つばさの翼 (第二章の18) ・・もどかしく歯がゆい時間・・

小説 つばさの翼 (第二章の18) ・・もどかしく歯がゆい時間・・ を更新いたしました。

以下は小説の一節です。


 伊織の心は、歯車を回してカチッ、カチッと秒針を懸命に動かそうとするものの、電池が切れかかって力が足りず、次の一秒を刻めずに同じ場所で足踏みをしている時計を見ているかのような、もどかしく歯がゆい気持ちでいっぱいになった。

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2009年3月 7日 (土)

つばさの翼 (第二章の16) ・・初めての経験・・

小説 つばさの翼 (第二章の16) ・・初めての経験・・ を更新いたしました。
以下は小説の一節です。


<まさか、亡くなったのはシロなのか。シロがおれに「つばさを頼む」と、言い残したのか。死んだ人の声を聞いたことは何度もあったけど、死んだ犬が人の言葉で話しかけてくるなんて初めてだ・・・>



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2009年3月 5日 (木)

つばさの翼 (第二章の15) ・・能力、再び・・

小説 つばさの翼 (第二章の15) ・・能力、再び・・ を更新いたしまいた。

以下は小説の一節です。


 ただそれは、突然得たいの知れない声が聞こえたからではなく、とっくの昔にそんな能力は失ってしまったと思って安心していたのに、今頃になって魂のみとなった者の念波を感じ取ったからであった。

<どうして今さら。もう二年以上、誰の声も届くことはなかったのに・・・。しかも、おれの名前を直接呼ぶなんて、いったいどこの誰なんだ・・・>


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2009年2月28日 (土)

つばさの翼 (第一章の13) ・・肯定的な心の隙間・・

小説、つばさの翼 (第一章の13) ・・肯定的な心の隙間・・を更新いたしました。

以下はその一節です。


 それはまるでこれから燃やされて、その煙と供に天国へと昇ろうとしているシロと同じようなものかもしれない。つばさには目の前のシロと、溶けて無くなろうとしている雪が、なんとなく重なって見えた。

 生き物の一生って、案外そんなものなのかもしれない。

 つばさの中のつばさがそう囁く。そしてつばさは、その言葉に一人頷いた。


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2009年2月27日 (金)

つばさの翼 (第一章の12) ・・葬儀屋さんの名前・・

小説 つばさの翼 (第一章の12) ・・葬儀屋さんの名前・・ を更新いたしました。

以下は小説の一節です。


「小父さんの仕事は、皆(みんな)が愛し、可愛がったペットたちが天国へ昇るお手伝いをすることなんだ。つばさくんのように別れを悲しむ子供たちと、これまでにも沢山出会ってきた。だからね、つばさくんの気持ちもよくわかる。キミは今、その胸の内で言うこと聞こうとしない自分の体に向かって、懸命にシロが天国へ行くためなんだ、と言い聞かせいる最中なんだ。違うかな・・・」

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2009年2月21日 (土)

つばさの翼(第二章の10) ・・死者と生者の境界線・・

つばさの翼(第二章の10) ・・死者と生者の境界線・・を更新いたしました。

以下は小説の一節です。


― 冷たい ―

 毛皮を纏っているにもかかわらず、冷え込んだ早朝にカーテンを開けたとき、不意に触れた窓ガラスのような冷たさが、シロの体から伝わってくる。

 ストーブに火を入れてから、小一時間は経っている。なのに、この人の温もりを寄せ付けようとしない冷たさ・・・。




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2009年2月15日 (日)

つばさの翼(第二章の9)  ・・何故?・・

つばさの翼(第二章の9)  ・・何故?・・を更新いたしました。

以下は小説の一節です。


何故、震える。何か怖いのか? 何が怖いのか? それとも原因は他にあるのか? つばさは訳がわからないまま軽い目まいの覚えたが、それでもなんとか毛布を取り終えて、それを陽子に手渡すことができた。


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2009年2月14日 (土)

つばさの翼(第二章の7) ・・張り詰めた雰囲気・・

つばさの翼(第二章の7) ・・張り詰めた雰囲気・・と、(第二章の8) ・・心遣い・・を更新いたしました。

以下は小説の一節です。


靖は、つばさが座り直すまで話を前に進めなかった葬儀屋さんを見て、つばさをただの子供と見なさず、シロを見送る家族の一人であると考えてくれているのだと思うと、彼の細かい心遣いが嬉しかった。

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2009年2月 8日 (日)

つばさの翼(第二章の5) ・・朝食・・

小説 つばさの翼(第二章の5) ・・朝食・・と、(第二章の6) ・・ペットの葬儀屋さん・・を更新いたしました。

小説の一文

「大人って、自分が悲しいときでも、それを自由に表現できないときがあるんやな。お父ちゃんとお母ちゃんの様子を見てたら、そんな気がしてきた。それに”処理する”っていう言葉がすごく引っかかるし、ぼくも二人の意見に賛成や」

 素直に「ありがとう」というのが少し照れくさかったので、回りくどい言い方でつばさはその気持ちを靖と陽子に伝えた。


とうとうシロと、最後のお別れをするときが近づいてきました。

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2009年2月 6日 (金)

つばさの翼(第二章の4) ・・朝の冷たい水・・

小説 つばさの翼(第二章の4) ・・朝の冷たい水・・ を更新いたしました。

以下は小説の中の一節です。


 洗面所の、銀色に光る蛇口を捻り水を出す。

 手で水を受けると、その冷たさのあまり少し顔を洗うことに躊躇いが生じたが、それを振り払い思い切って掌の中に溜まった水を顔に擦りつけた。

 顔に点在する神経が敏感に反応して、刺すような冷たさの感覚が頭の先から爪先まで、一秒とかからず全身に伝える。一瞬にして、体全体がキュッと縮むのがよくわかった。


小説「つばさの翼」こちらからどうぞ

2009年2月 1日 (日)

つばさの翼(第二章の3)  ・・ダイニングルーム・・

つばさの翼(第二章の3)  ・・ダイニングルーム・・を更新いたしました。


「よし、朝の挨拶はできたな。とりあえずこっちに来て、朝御飯を食べなさい」

「エエわ。食べとうない」

「アカン、朝飯は一日の活力源や。どんなときでも、朝のご飯は抜いたら駄目なんや。さあ、おいで!」

 右肩に乗っかっていた靖の左手が、スルスルとつばさの右腕を伝うように降りてゆき、その先にある手首をギュッと掴むと、そのまま強引にダイニングルームへと導いた。


やはりシロの死は、事実であったと落胆するつばさ。そんな彼に食欲などわくはずもなく・・・。

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2009年1月31日 (土)

つばさの翼(第二章の2) ・・儚い希望・・

つばさの翼(第二章の2) ・・儚い希望・・を更新しました

― どうして布団の中で寝てるんや。

泣いてもいいと靖に言われた瞬間に、涙が溢れ出てきた。シロの体の上に泣き崩れて、自分の頬と頬に触れたシロの体が、涙でグショグショに濡れていた。

― それやのに、どうして布団の中で・・・。あれは夢やったんやろうか? もし夢やったとしたら、ひょっとしたら・・・。

シロを失った次の日。つばさはどのような心境で新しい朝を迎えたのか


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2009年1月29日 (木)

つばさの翼 (第二章の1) ・・始まった三学期・・

小説 つばさの翼 (第二章の1) ・・始まった三学期・・ を更新いたしました。
第二章のスタートです。


「ほら、まただよ。おとといも、その前の日も同じことを言ってたじゃないか。元気出せよ、つばさ。シロが死んじゃって、とっても悲しいのはよくわかるよ。俺だって、飼ってたハムスターが死んだときは、すごく悲しかったし落ち込んだもん。でもさ、いつまでもそんなんじゃ、シロだって天国できっと心配してるよ。な、だからさ!」

シロが死んでから一ヶ月以上が経ちました。あれから元気のないつばさ。そんなつばさを友達の伊織が励ましますが・・・

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2009年1月25日 (日)

つばさの翼 (第一章の23)(第一章の最終話)  ・・スクーターの音・・

つばさの翼 (第一章の23)(第一章の最終話)  ・・スクーターの音・・を更新いたしました。

― つばさがシロを安心させたとき、すでにシロの魂はあの雲の上に召されようとしていたのかもな。ただ俺とつばさ、陽子の思いが、シロの命を辛うじて細い糸でこの世に繋ぎ止めてたんや。そして俺がスクーターの音に気を奪われたとき、俺からシロへの糸が切れた。一本が切れたら、残りの二本だけでは、シロを繋ぎ止めておくことができんかったんや。そやから次々と糸が切れてシロは天に昇っていった ―

つばさはシロが天に召された後、ようやく自分の気持ちを解放することができました。

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2009年1月24日 (土)

つばさの翼 (第一章の22)  ・・弾けるシャボン玉・・

小説 つばさの翼 (第一章の22)  ・・弾けるシャボン玉・・を更新したしました。
 
シロが死んだ、ということを口にして、それを自らの耳で拾った途端、つばさの内側に悲しみの満ちたシャボン玉が一つ、また一つとどこからか飛んできてはパチンと弾ける。

 そのうちにシャボン玉の数は倍々で増え続けるようになり、つばさの内側のいたる所で連鎖反応を起こすかのようにして、次々と弾け割れだした。


 
つばさの腕の中でその一生を終えたシロ。そしてそのときを受け入れようとするつばさ、陽子、靖の親子。

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2009年1月18日 (日)

つばさの翼 (第一章の21) ・・届いた声と引き換えに・・

つばさの翼 (第一章の21) ・・届いた声と引き換えに・・を更新いたしました。

「シロ・・、逝ってしもうたん・・やね・・・」

 涙に咽(むせ)びながら、陽子は事実を確認した。できることなら、自分の推測が外れていてほしいと願いながら。



とうとうやって来たシロとの別れの瞬間。その時をつばさはどう受け止めるのでしょうか・・・。

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2008年12月31日 (水)

つばさの翼 (第一章の17) ・・心残りの種・・

つばさの翼 (第一章の17) ・・心残りの種・・を更新いたしました。

-これはなんの根拠もない、単なる私の直感的な思いでしかないのですがね。まるで何か強い思いがあって、それがシロの命の炎をかろうじて燃え続けさせている、そんな風にわたしには思えて仕方がないんですわ。非科学的なことを、と思われるかもしれませんが、犬は利口な生き物です。人の気持ちを敏感に感じ取ります。シロには、まだ死ねないという、何か心残りのようなものがあるのかもしれませんね-

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2008年12月27日 (土)

つばさの翼

小説 つばさの翼 (第一章の16)  ・・後悔・・を更新しました。

・・明日の朝は、ぼくがシロを散歩に連れていく、と靖に言っておきながら、翌朝になると心地良い布団の中から抜け出すことができず、何度も起きなさいと声をかけられた挙句に、「お父ちゃん。やっぱりシロの散歩はお父ちゃんが行って」と言ったら、しこたま靖に叱られた。・・

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2008年12月21日 (日)

つばさの翼 

小説 つばさの翼(第一章の14) ・・おはよう、シロ!・・を更新いたしました。

それと書いている本人が一番驚いたのですが、みんなのココログ小説のファンタジー部門で、現在ランキング1位(自分で書くのも、なんだかな、と思ったもんでちょっと小さい字で書きました)になっております。

ぜひ皆様、一度お立ち寄りください。

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2008年12月16日 (火)

つばさの翼 (第一章の13) ・・眠れぬ夜に・・

小説 つばさの翼を更新いたしました。

・・そこでどうせ眠れぬならと、布団をそっと抜け出して枕元に置いた上着を羽織ると、できるだけ物音を立てずに階段を下り、子犬が眠る畳の部屋へ足を忍び入れ、みかん箱の横で静かに屈み込んだ。・・

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2008年12月 7日 (日)

つばさの翼 (第一章の10) ・・シロに何故”シロ”と名付けたのか?・・

小説 つばさの翼を更新いたしました。

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2008年12月 4日 (木)

つばさの翼 (第一章の9) ・・拾われた子犬・・

つばさの翼 (第一章の9) ・・拾われた子犬・・ を更新いたしました。

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2008年11月28日 (金)

つばさの翼 (第一章の7) ・・嘘・・

小説 つばさの翼 (第一章の7) ・・嘘・・ を更新いたしました。

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2008年11月23日 (日)

つばさの翼 (第一章の6)  ・・シロの声・・

小説 つばさの翼 を更新いたしました。

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2008年11月21日 (金)

つばさの翼 (第一章の5) ・・老犬の眼差し・・

小説 つばさの翼 

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2008年11月17日 (月)

小説 つばさの翼 4

小説 つばさの翼 4 ・・ぶつかる感情・・ を更新いたしました。

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2008年11月16日 (日)

小説 つばさの翼 3 ・・父親という肩書き・・

小説 つばさの翼 3 ・・父親という肩書き・・を更新いたしました。

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2008年11月12日 (水)

つばさの翼 2 ・・暖かい部屋・・

つばさの翼 2 ・・暖かい部屋・・ をアップしました。

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