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こんな記事を書いてきました

つばさの翼 Feed

2009年5月24日 (日)

つばさの翼 (第三章の9) ・・そや、死んだらええねん・・

小説 つばさの翼 (第三章の9) ・・そや、死んだらええねん・・ を更新いたしました。

― そうや、どうせやったら僕も死んだらええねん。お父ちゃんにはあんなこと言われてしもうたし、お母ちゃんかって僕のこと、どこまでわかってくれてるか・・・。それやったらもう死んでしもうて、僕も天国に行ってシロと二人で過ごした方が楽しいやん。こないだもニュースで言うてたもんな、小学六年生が自殺したって。僕と同(おんな)じ歳やん。そや、死ぬって案外簡単なんかもしれへん ―

 自分の命を自ら断つ、というこを何の恐怖も躊躇(ためら)いも無しに考えついてしまうほど、つばさの心は凍りつき、その冷たさで感覚が麻痺してしまっていたのだった。


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2009年5月13日 (水)

つばさの翼 (第三章の7) ・・靖の苦悩・・

小説 つばさの翼 (第三章の7) ・・靖の苦悩・・ を更新いたしました。

そう、人は悲しみの淵や絶望という断崖の縁から足を踏み外してしまったとき、谷底から崖の上まで戻るためには、他の誰でもない、己自身の力で這い上がってくるしかない。

 ただ、それが現実だとは言え、人生というものの残酷で過酷な一面を理解するには、つばさはまだまだ人そのものとして幼かった。

 片や靖や陽子にしても親として未だ半人前であったため、世の中の理(ことわり)をよく知らない我が子を崖の頂へと上手く導いてやる術を知らなかった。


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2009年5月 9日 (土)

つばさの翼 (第三章の6) ・・つばさの苦悩・・

小説 つばさの翼 (第三章の6) ・・つばさの苦悩・・ を更新いたしました

「おい、人が聞いてんねんから、返事くらいしたらどうや」

「・・・うるさいな・・・」

 陽子には、つばさが何と言ったのかよく聞こえなかった。かろうじて靖の耳に届くほどの小さな呟き。しかしその呟きが靖の心を大きく波立たせる。

「なに!? 何(なん)やて。もういっぺん言うてみ!!」


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2009年5月 4日 (月)

つばさの翼 (第三章の5) ・・あれから・・

小説 つばさの翼 (第三章の5) ・・あれから・・ を更新いたしました。

「ごちそうさま・・・」

「なんや、もうごちそうさまか? ご飯のおかわりはいらんのか?」

 この一ヶ月で、同じような問いかけを何度したことだろうか。

 いらない、とつばさが答えることはわかりきっていたが、それでも靖はそれっぽっちでは足りないだろうという顔をしてつばさに訊ねた。


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2009年4月28日 (火)

つばさの翼 (第三章の4) ・・消える意識・・

小説 つばさの翼 (第三章の4) ・・消える意識・・ を更新いたしました。

 時計を見たわけではないが、ベッドに入ってから十分か十五分は経っただろうか。だとすると、もうそろそろ十時半になる。

<ダメだな。お父さん、やっぱり今日はなかなか帰ってこないや> 

 祐介の帰宅時間はかなり遅くなりそうだと思った途端に、眠気がさらに増してきて自分の意思とは関係なしに瞼が閉じられていく。そしてファ~と大きな欠伸を一つした後、伊織の意識はスーッと深い闇の中へ消えていった。


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2009年4月23日 (木)

つばさの翼 (第三章の3) ・・陽の力・・

小説 つばさの翼 (第三章の3) ・・陽の力・・ を更新いたしました。

「そうだね。お父さん、こういう場合に意外と良(い)いアドバイスをしてくれるときがあるもんね。」

「意外と、だけは余計よ。でも…、それも言えてるか」

 由紀恵はカラカラと大きく笑った。

 どこかから、祐介のクシャミが聞こえてきそうだ。そう思いながら、伊織は母親の顔を眺めた。

 聴話霊力とはまったく別物だが、今でも由紀恵は不思議な力を一つ持っている。


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2009年4月17日 (金)

つばさの翼 (第三章の1) ・・由紀恵と二人きりの夕食・・

小説 つばさの翼 (第三章の1) ・・由紀恵と二人きりの夕食・・ を更新いたしました。

 三十日目を迎えた週の金曜日、夕食に出てきた大好物の、由紀恵特製デミグラスソースがかけられたハンバーグを目の前にしても、伊織の箸は一向に進まなかった。

「もう、伊織ったら、つはさが元気ないのはよくわかるけど、ここんとこ、あんたまで落ち込んじゃって、いったいどうしたのよ」

「別に落ち込んでるわけじゃないよ。」

 テーブルを挟んで伊織の正面に座っている由紀恵が、天板に両手をついて椅子から腰を浮かして身を乗り出し、息子の顔をしげしげと覗き込む。


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2009年4月13日 (月)

つばさの翼 (第二章の38)(第二章の最終話) ・・灰色の一ヶ月・・

小説 つばさの翼 (第二章の38)(第二章の最終話) ・・灰色の一ヶ月・・ を更新いたしました。

 こうしてクリスマスの日も、つばさの部屋はただ寂しい時間だけが過ぎていった。そしてそんな時間の流れは、この日だけにとどまらず冬休みを通して同じような調子で過ぎてゆき、三学期が始まってからも、つばさの心は相変わらず空っぽのままだった。

 こうしてシロが死んでからの一ヶ月という時間は、つばさにとっても伊織や靖に陽子たちにとっても、灰色の雪雲が空を覆いつくしたような、重苦しい雰囲気を纏った長い長い時間となったのである。


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2009年4月 9日 (木)

つばさの翼 (第二章の37) ・・悩める伊織・・

小説 つばさの翼 (第二章の37) ・・悩める伊織・・ を更新いたしました。

 でも、シロがあそこまで心配している様子からすると、つばさはなかなか立ち直れないと考えているのかもしれない。音信不通の間、特別なことはしなくてもいいってあいつは言ってたけど、本当にそれで大丈夫なのか? やっぱり元気づけることをやってやらないとな。

 そう思って思案してみるものの、すぐにはこれといった良い案が浮かんでくるはずもない。そんな自分に伊織は少し苛立ちを覚える
。 

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2009年4月 8日 (水)

つばさの翼 (第二章の36) ・・しばしの別れ・・

小説 つばさの翼 (第二章の36) ・・しばしの別れ・・ を更新しました。

<ただ、こればっかりはどんなに優しい言葉をかけてもアカン。自(みずか)らが立ち直ろうとせんことには、どないもならん。そやから伊織、つばさを傍で支えてやってくれ。特別なことはせんでエエ。ただ傍に居てやるだけでも、伊織なら・・つばさは・・・受け入れ・・だろう>

 はっきりと聞こえていたシロの声が、また途切れ途切れになり始め、ところどころの言葉が飛んでいる。それはまるで、電波の受信状況が悪いラジオを聞いているいるかのようだ。

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